フロマ爺のチーズちょっといい話

卵焼きとオムレツ

2013年4月15日掲載

先ごろ昭和の大横綱大鵬がなくなりましたが、その時久しぶりに「巨人、大鵬、卵焼き」という言葉を聞きました。これは1960 年代、当時の子供たちが好きな物のベスト3という事で、どこかのメディアがはやらせたものですが、ここに卵焼きが入っている事が時代を感じます。話は少し変わりますが、現代の人達は朝食に何を食べているかという調査があります。それによると朝食は「ご飯派」と「パン派」があってパン派がやや優勢。もちろん日替わりで両方食べている家庭もあります。その両派の副食のベストテンを見ると卵料理が上位にきているのです。それにソーセージが両派の真ん中頃に入っているのにチーズはパン派の8位です。残念!でもチーズオムレツという手もありますからね。

しっかり焼くスペイン風オムレツ。

さて巨人、大鵬の時代卵焼きはご馳走だったのです。デパートの食堂や洋食屋では卵焼き(オムレツ)は人気メニューでした。オムレツは簡単な料理のように見えて、うまく焼くには技術が要ります。当時洋食屋ではオムレツが焼けるようになったら給料が上がったといいます。元帝国ホテルの総料理長だった故村上信夫氏は、著書の中で「オムレツは火の芸術である」とし、フライパンの馴らし方から卵の割り方、火の強さなど2頁にわたって事細かに書いています。

その中でオムレツという名の由来についてのエピソードも紹介しています。昔スペインの王が領地を巡回中にある農家に立ち寄り食事を所望した。その家の男は、あり合わせの卵を割り、素早く焼き上げて差し上げた所、王はいたく感動して、なぜかフランス語で叫んだ。「なんと早い男だ!(ケル・オム・レスト=Quel homme leste !)」。これがなまってオムレットになった。この逸話には時々出会いますが、そういえばオムレツ(トルテーリャ)はスペインの定番料理でしたね。でも日本にだってダシ巻という立派な卵焼きがあります。

300種のオムレツを網羅した本。

私の手元に今から40年以上前に書かれた300種のレシピが書かれた「オムレツの本」がある。著者はアメリカのチェンバレンという奥さんで、辻調理師学校が一つひとつ試作しながら翻訳したという貴重な本です。この中で著者はオムレツの基本として「バターは焦がすな、卵は焼き過ぎるな」と書いています。基本さえ習得すれば応用範囲は広いのがオムレツです。この本には7種類のチーズオムレツも入っているし、甘いデザート用のオムレツも網羅しています。また、チェンバレンさんはオムレツの語源にも触れ、ローマ時代の蜂蜜入りの卵焼き、オウオメレに由来すると書いています。

巨大オムレツが有名なモン・サン・ミッシェル

世界で最も有名なオムレツといえばフランスのモン・サン・ミッシェルのプーラールおばさんのオムレツでしょうか。これはまだ島へ行く道路がなかった時代引き潮の合間を縫ってモン・サン・ミッシェルにやってくる巡礼者達の空腹を手早く満たすために、宿場のマダムが考えついたオムレツです。かき立てた卵とノルマンディーのバターをたっぷり使い長柄のフライパンを暖炉の火に当て一気に焼きあげる。そのパフォーマンスが受けたのです。私は百年以上の歴史があるこの店をちょっと覗いただけで入らなかった。量が多い上、たかがオムレツなのにこの値段?というほど高いのです。しかも塩味だけのプレーンオムレツですから今の若い人たちにはどうなのでしょう。ネットで調べると、味がなくまずい上に高かった、と大方の人が不満たらたらです。現代の味覚に合わせるなら地元ノルマンディーのチーズも使ったら現代の観光客に受けるのでは、と勝手に思ってますが伝統は曲げるわけには行かないでしょうね。