フロマGのチーズときどき食文化

レストランとはスープだった?

2015年12月15日掲載

今やビストロも様々です

料理屋をレストランというのはパリで生まれた呼び名ですが、今や世界語になっていますね。でもフランスでは、同じく食事を提供する場所にはビストロとかブラッスリーと呼ぶ所もあります。20世紀後半までは、これ等の業態に明確な違いがあったのですが、今ではそれがなくなったそうです。レストランについては後で書きますが、ビストロ(Bistro)の名の起こりについては、こんな話があります。1815年かの有名なワーテルローの戦いの後にパリに入城したロシア兵が、上官の目を盗んで居酒屋に入りビストロ!(早く)ビストロ!と叫んだところから来たという話。いや、それは俗説でビストウイユ(混ぜ物をした安酒)からきたという説があります。どっちでもいいでしょう。

ブラッスリーの老舗LIPP

ブラッスリー(Brasserie)の方はもともとビール工場とかビールを提供する場所を指す言葉だったようですが、18世紀後半の普仏戦争の時にアルザスからパリに逃れてきた人が、ビールとシュークルートなどの郷土料理を提供するブラッスリーを開いたといわれています。それが、パリ市民の新しい社交場として次第に人気を獲得して行きます。

パリ6区のサン・ジェルマン・デ・プレ教会のはす向かいにあるブラッスリー・リップという店は、1880年創業の老舗で、20世紀前半には哲学者サルトルなど文学者や芸術家が集まるところとして知られ、アメリカの作家ヘミングウェイも常連だったといいます。そんな訳で若い頃から筆者は店の名前だけは知っていた。後に、やっとパリに行ける時代になってから、二度ほどこの店でアルザス料理を食べたことがあります。今では希少になったフランスの古典料理を出すことで人気がある店だそうです。

さてレストランはスープだったという話に戻ります。ちなみに仏和辞典でRestaurantという単語を見ると、最初に「元気を回復する、強壮剤」などの訳が出てきます。

ブイヨンに浸したパンがスープ

1765年パリでブイヨンを小売りするブーランジェという店が、ブイヨンに「Restaurant」という名をつけ「素敵なレストラン売ります」という看板を出す。これが大当たりをとるのですが、この滋養強壮を売り物にするレストランというスープが、後に「料理屋」を指す言葉になったというわけです。当時は食事をさせる場所はなく、このレストランが繁栄するのは、フランス革命後のいわゆる「食の民主化」が進んだ時代以降なのです。

フロマージュ・ド・テット

ところで、レストランとは元気の出るスープだったのですが、ではスープとは何か。再び辞書を引けば、Soup「汁を吸わせたパンくず」とあります。そう、昔は固いパンを煮汁に浸しで食べた。それをスープといったのだそうです。古いフランス語は一筋縄ではいきませんね。ちょっと話はそれるけど、フランス人がよく食べる「頭のチーズ=Fromage de tête」というのがあります。最初はチーズの一種かと期待したのですが、見れば豚の頭肉のゼリー寄せなのです。これは結構うまい。私は好きです。B級グルメですね。パリのお惣菜屋なら大抵売っています。