最近、巷ではギリシャヨーグルトがバズリ始めた気配があります。ギリシャヨーグルトとはご承知のとおり水切りヨーグルトのことで、2000年くらい前からギリシャや中近東で食べられていたそうで、ヤギ乳や牛乳から作られたと伝えられています。ホエイの一部が抜けるので、通常のヨーグルトに比べ100g当たりの乳糖やホエイたんぱく質などの含量が低下しています。また、乳酸菌などの菌の一部も減少していると思われます。
ギリシャヨーグルトの製造には3種類考えられます。①通常のプレーンヨーグルトを濾紙の上に空け、冷蔵庫内で放置し、ホエイを滴下させます。先日、TVを観ていたら、ギリシャヨーグルトを提供している店では2日間水切りしているそうです。②生乳に粉乳(脱脂粉乳や全脂粉乳)を加え、たんぱく質濃度を高くします。③水切りするかわりに限外濾過膜などで濃縮(3倍程度)するなどの方法が用いられています。これらの方法を組み合わせて作っているのかもしれません。
写真は近隣のスーパーにて買い集めたギリシャヨーグルトです。また、表は容器に記載されている分析値などです。栄養成分や価格は100g当たりの数値です。A パルテノはたんぱく質に対して3倍濃縮となっており、たんぱく質が約3倍で、他の成分は牛乳とほぼ同じです。また、原料として乳製品のみ記載されています。つまり原料は生乳ではなく、脱脂粉乳、全脂粉乳、クリームなどが使われています。このメーカーの代表的なプレーンヨーグルトでも原材料名には生乳とは書かれていません。粉乳を主原料にした方がしっかりとしたカードとなり、輸送中の振動によりカードが壊れるリスクを抑えることができるためです。
B ギリシャヨーグルト と C GREEK YOGURT は生乳を使い、これに粉乳を加えています。GREEK YOGURTは乳たんぱく質(多分カゼイン)も使っています。どの程度水切りをしているか分かりませんが、A パルテノに比べたんぱく質が少なく、カルシウムが多いことが特徴です。B ギリシャヨーグルトにはアテネ農業大学乳製品研究所に登録されているギリシャ伝統のサーモフィラス菌と独自菌を使って発酵させている旨が記載されています。そのせいか、酸味が強い印象でした。
ギリシャヨーグルトは乳酸菌による酸凝固と水切り工程による一部のホエイ排除が行われているため、ナチュラルチーズの規格にも合致します。チーズとヨーグルトの主な違いは、ヨーグルトでは酸凝固に用いた乳酸菌などの生菌数が107個/mL以上であることが必須ですがチーズにはそのような規定はありません。ギリシャヨーグルトではホエイを一部除きますからその際に乳酸菌も一部流出します。しかし、一般的にヨーグルト中の乳酸菌数は108個/mL以上ありますから3倍濃縮しても107個/mL以上は十分あり問題ありません。すなわち、ギリシャヨーグルトはヨーグルトと呼んでもチーズと呼んでも構いません。ウィキペデイアによれば、「ヨーグルトチーズ」と呼んでいる国もあるそうです。なので、C.P.A.の皆様もギリシャヨーグルトをチーズの仲間に加えてください。食感はクリームチーズに似ているので、デザートなど様々な利用が可能と思います。是非、あれこれトライしてみてください。
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