フロマGのチーズときどき食文化

パリの朝市の野菜売り場を探検する

2023年11月15日掲載

 

西ヨーロッパの国々の朝市などを回ってみると、日本は野菜の種類が多い国である事に気付く。ヨーロッパの市場などで見られる野菜のほとんどが日本にもあるけれど、加えて日本は「葉物野菜」が多いようです。そのあたりを、パリの路上で開かれている朝市の写真を見ながら検証してみましょう。ヨーロッパ諸国の中ではフランスは野菜の種類が多い国のようだけれど、やはり「葉物野菜」と呼ぶ野菜が少ない。今回紹介する野菜の写真は6月の上旬に、パリ北西部の高級住宅街といわれる区画の路上で開かれていた市場で撮ったものです。ここでパリの路上市のついて少し書いておきます。パリ市内には大きなスーパー・マーケットがないらしい。あるのかも知れないけれど、まだ見た事がないのです。

少し古い資料ながら、手元にパリ全域の47か所で開かれる路上市場を示した地図があり、そこには、それぞれ市が開かれる曜日(週に2~3回)や時間帯が書かれているのです。その時間帯は朝の7時から午後の13時頃までという事ですが、この手の路上の市場は朝一番に行かなくては面白くない。いい写真も取れないし、人の肩越しに品物を見ることになるのです。

① 市場に陳列されている赤カブの山

今回はその朝市の野菜の売り場を紹介するけれど、もちろん肉類、魚類、カキなどの貝類、そして、当然チーズもある。筆者がパリの路上市にはまってから半世紀、かつては木の台の上に、じかに品物を並べていたけれど、今は普通のお店と変わらない売り方をしているようです。特にチーズは車輪付きの冷蔵ケースを車に引かせて路上に出店しているのです。さて、今回はパリの野菜の話でしたね。
写真①は分かりますか。フランス語ではラディ(Radis)といい、筆者が子供の頃はみな赤カブといって自家栽培していたけれど、今では日本では全く見ることはできなくなりました。

② パリ名産のアスペルジュ

けれども、なぜかパリの市場ではラディを写真のように大量に陳列しているのです。パリで生活していた奥さんがある雑誌に「パリの小学校では給食にラディに塩とバターを付けて食べさせています」書いていました。
写真②はホワイト・アスパラガスです。日本ではほとんどがグリーンだけれど、逆にフランスではほとんどがホワイトなのです。それも食べる量が多いようで時期になると、どこの店へ行っても大量に並んでいます。どうやって食べるかといえば、カットせず、そのままくたくたになるまで茹でて、マイヨネーズ(Mayonnaise)やヴィネグレット系のソースで食べるそうです。

③ 鮮やかな赤の完熟トマト

写真③はフランス語でもトマトですが、日本のトマトと様相が随分違いますね。日本にあるようなトマトも少しは並んでいたけれど、この手の物が主流のようですが残念ながら食べた事がない。でも、赤の色が衝撃的な美しさですね。こちらではトマトは主にソースの材料になるので大形で完熟したものが多く売られているようです。

④ その名はチコリかアンディーヴか

写真④はきれいな野菜ですが、日本ではなかなか出会えない。そして、その名前が実にややこしい。フランス語ではアンディーヴ(Endive)ですが、日本ではエンダイブと言ったり、ある野菜のガイドブックではチコリと書いている。これがごっちゃになって訳が分からなくなっているのです。

⑤ 日本では入手が難しいチョウセンアザミ

写真⑤は日本では全く馴染みのない野菜だけれど、フランスでは地方の町の露店市にも並んでいたりするごくありふれた野菜のようです。これはチョウセンアザミのつぼみでフランス語ではアルティショー(Artichaut)といいます。普通はこれを丸ごと塩ゆでにし、つぼみを覆っているガクと呼ばれる物を外側からはがしながら、その接着部分についているわずかな柔らかい部分を食べます。ちょっと、ゆり根に似たような味がするけれど、食べられる部分は僅かで食べ終えると皿の上にその皮が山の様に残りました。

 

 

©写真:坂本嵩/チーズプロフェッショナル協会
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