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おにぎりとミシュラン・ガイドブック

2018年12月15日掲載

おにぎりとミシュラン・ガイドブック

進化するおにぎり市場 

この11月にミシュラン社のガイドブック「ミシュラン東京2019」が発売され、ひとしきり話題になりました。それは浅草のおにぎり屋が登場したからです。
ミシュランといえば、優秀なレストランに星をつけ評価するという事は、グルメを自負する日本人にはよく知られていますが、それ以外の事はあまり知られていないようです。それと、ヨーロッパのミシュラン・ガイドと日本のそれとでは取り上げる料理や評価の仕方が、かなり違っているのです。そんなわけで、このミシュランのガイドブックについて、少し書いてみましょう。

ミシュランの初版本(レプリカ)

ミシュラン社は19世紀末にフランスで誕生したタイヤの会社ですが、やがて到来する車社会を見越して、1900年に快適なドライブを楽しむためのガイドブックを発行しドライバーに無料で配布します。2点目の写真がその初版本のレプリカです。これには主要なホテルのほか、修理工場やガソリンスタンドは載っているけど、レストランはまだ載っていません。

後にこのガイドブックは有料になり、1926年にはおいしい料理を出すホテルに星をつけるようになる。そして1931年以降、星の数でのレストランをランク付けする方法が採用され、現在のミシュラン・ガイドの原型となるのです。その星の数の意味を簡単に書くと、☆☆☆のレストランは、そのためには旅行する価値のある卓越した料理を出す店。☆☆は遠回りしてでも訪れる価値のある店。は近くに行ったら試す価値のある店、と言う事だそうです。やがてこのガイドブックが話題になり権威が高まると、フランスのレストランの有りようにも影響を与えます。

牧場の中に三ツ星レストランが…

三ツ星を獲得すれば、店がかなり辺鄙な場所にあっても世界中から客が来る。例えばフランスのオーヴェルニュ圏にある、最も予約が取れない三ツ星レストラン、ミッシェル・ブラスは交通機関がいっさいない、ライオル・チーズに原料を提供するオーブラック牛が放牧されている牧場の中にあるのです。

筆者が1970年代にワインやチーズを求めてヨーロッパを一人旅していた頃は、このレストランガイドには随分と世話になりました。このガイドブックは、可能なものはすべて記号化されているので、これを覚えればフランス語を読めなくとも使えます。特に地図が分かりやすく目当ての市場なども一目でわかるので重宝しました。

ミシュランフランスと東京版

このガイドブックの日本版が出たのは2007年ですが、その時思ったのは日本にもフランス料理店はあるものの、それ以外の料理、例えばすし、天ぷら、蕎麦などフランス料理と作り方もサービス方法も全く違う日本特有の「単品料理専門店」を、どういうシステムで評価するのか興味がありました。しかし数年前のラーメン店の一つ星獲得にも驚いたけど、今回のおにぎり屋が登場というのもびっくりでした。
改めて調べてみれば「ミシュラン東京」には、韓国、中華、欧風料理の他、おでん、お好み焼き、餃子を始め、居酒屋とか、おばんざいなどちょっとイメージしにくい店も載っている。ミシュラン東京の不可解さ、というか懐の深さなのでしょうか。であれば、最近激しく進化し外国人にも人気というおにぎりが載るのは当然なのかも知れません。そういえば、近所の小さなおにぎり専門店の「チーズおかか」というのが定番になりました。次は何がミシュランに載るか、興味のあるところです。

チーズおにぎり