第5回

熟成 U

セミハード・ハードタイプの場合
セミハード・ハードタイプといっても、エダムやゴーダ、ラクレット、コンテやパルミジャーノ・レッジャーノと、大きさも硬ささも様々ですが、長期熟成型になると外皮も硬く、保存性に優れています。
では、この硬い外皮はどうやって作られるのでしょうか?

ブラッシングで鎧をまとう
白カビタイプは白カビ菌を、ウォッシュタイプはリネンス菌を、表皮に繁殖させることによって、外皮を形成していきましたが、このタイプでは「ブラッシング」という工程を熟成中に行います。グリーンチーズ(熟成前の若いチーズ)の表面は柔らかく、水分も多いので、雑カビや雑菌の繁殖にさらされる可能性があります。そこで、ブラシや布を使って表面を磨き、刺激を与えることによって、硬い外皮が形成されます。これを「ブラッシング」と呼び、この行為によって形成された外皮を、通常「リンド」と呼びます。こうして一旦硬い外皮が出来てしまえば、雑カビや雑菌に対しての防御力がアップし、たとえ、カビが生えたとしても、きれいにふき取ることができます。そうして中身は守られながら、乳酸菌や酵素などの働きによって、じっくり熟成されていくのです。

ハードなのにウォッシュする?
フランスのボーフォールやコンテなどは、ブラッシング以外にも、ウォッシュ同様、水分を与えながら「洗う=ウォッシグ」という工程を行います。熟成中に表面に塩をふり、濡れ布巾で拭いたりブラシで磨いたりする行為を繰り返します。これによってウォッシュタイプと同じく「リネンス菌」が繁殖と衰退を繰り返し、リネンス菌がつくる粘膜が積み重なって、硬い外皮(リンド)をつくりあげます。これを「モルジュ」とも呼び、このチーズを拭くときにつかう、リネンス菌と塩水が混ざった液を「モルジュ液」といいます。

カビも鎧となる?
日本ではまだまだ一般的ではありませんが、チーズ王国ヨーロッパでは、トム・ド・サヴォワなど、グレーのカビに覆われたチーズを見ることがあります。これは熟成中に、外皮に付着した、猫の毛のような毛足の長いカビを、叩いたり撫でつけたりして潰し、外皮を形成したものです。但し、これらのカビは、その土地に根ざしたそのチーズに適したカビで、決して有害なものではありません。そして、このカビの外皮はブラッシングやウォッシングで作られた外皮同様、中身を守り、熟成を助長する重要な役割があるのです。

リンドをつくらないチーズ。
それ以外にも、ある程度熟成された段階で、外皮を削り落とし、ワックスを施して、中身を保護するチーズもあります。黄色や赤いワックスに包まれたオランダのゴーダやエダムがそうです。

いずれにせよ、外皮はチーズにとって大事な鎧。たとえ長期保存型のチーズといえど、一旦カットして外皮を傷つけてしまったら、鎧としての働きは無くなり、空気中の雑菌が繁殖しやすくなるので、なるべく早く食べきりましょう。特に湿度の多い日本では、欧州のように室温で保管するのは難しく、雑菌の多い冷蔵庫内での保管にも気を配る必要があります。

このように、これらのチーズは、乳酸菌の力だけではなく、カビや酵母の共同作業によって、そのチーズの風味やフレーバー、食感を形成していきます。つまり、そのチーズの味わいをつくるのに適したカビや酵母を付着させ、繁殖しやすい環境(温度や湿度、空気の流れ)をつくることが大切になのです。




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