第3回

ミルクからチーズへ

チーズ造りのシナリオ 其のU

液体から固体へ
いよいよ液体から固体へ変化させます。
温度とスターター(乳酸菌)で固まる準備を終えたミルクに、レンネット(凝乳酵素)を加えます。
すると、液体だったミルクは徐々に固まり始め、フルフルの杏仁豆腐状になってきます。この時点の味わいは、ほんのり甘いミルクプリンのよう!

仔牛が直接乳房から母乳を飲むこと、つまりミルクは@体温のまま(暖かいまま)仔牛の体内に入る。A乳房中に混入していた乳酸菌が既に乳酸発酵を始めている。そしてB胃中(仔牛の場合は第4胃)の酵素がミルク中を固める。そう、ここまでの工程は、まさしく仔牛の胃中で行われていることの再現ですね。

もう一つの凝固方法

しかし、全てのチーズがレンネットを用いて作られているわけではありません。ミルクを固める手段として、これまで述べた方法を「レンネット凝固」と呼びますが、もうひとつ「酸凝固」という方法があります。
前回、乳酸菌をスターターとして@レンネットの凝固作用を助ける A有害雑菌の繁殖を抑える働きがあると述べましたが、それ以外にも、この乳酸菌の働きだけでミルクを固める方法があります。これが「酸凝固」です。
これは、乳酸菌がミルクの中の乳糖を食べて乳酸をつくる働き(乳酸発酵)を利用したもので、

【乳酸発酵とpHの変化】

この作り出された乳酸によって、酸っぱくなり(pHが下がる=酸度があがるという)「等電点」と呼ばれるpH4.6に(ちなみに牛乳のpHはほぼ中性の6.5〜6.7)と、ゆるいヨーグルト状の塊となります。しかしながら、この凝固方法だけでは固いチーズの生地(カード)は造れないため、主にフレッシュチーズ(フロマージュブランやクワルクなど)に用いられる方法です。
また、チーズによっては、酸凝固とレンネット凝固を組み合わせてカードを造るチーズもあります。
※pH値  数値が1に近いと酸性、数値が14に近いとアルカリ性を示す。

ミルクからチーズへ
しかし、このままではチーズとは呼べません。チーズがミルクと同じ味でないことから分かるように、「ミルク」と「チーズ」では成分の違いがあります。
ミルクの成分は @水分 A蛋白質 B脂肪 C糖質(乳糖) Dミネラル・ビタミンですが、このうちABDがチーズになります。つまり、固まった乳の塊から水分と糖質を排出しなければなりません。
そのために、次に「カッティング(カードカット)」という工程を行います。
その名前のとおり、この塊(カード)を均一に裁断し、水分を抜けやすくする作業ですが、ここで固いチーズほどカッティングを細かくし、カード粒を小さくします。また、軟らかいチーズほどカッティングは少なく(中にはおたまですくうだけのチーズもある)水分を多く残した柔らかいカードにします。
また、フロマージュブランやクワルクといったフレッシュチーズの場合、プリン状のカードを、布袋に流し入れたり、孔のあいた型に入れて自然に水分を抜く脱水方法を取ります。
こうして排出された水分には、糖質(乳糖)や水溶性の蛋白質(乳清蛋白質)が溶け込んでおり、これを「ホエー(乳清)」と呼びます。
そう、カッティング後のカードは、糖質がホエーに移行しているため、レンネットを加えた当初の塊に感じた甘さはありません。
更にホエーを抜きやすくするために、チーズによっては、加温や温水を加える工程を行います。


おたまでカードをすくって、型に入れる


型に入れられたばかりのカード。
まるで杏仁豆腐!