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チーズができるまで

第5回:熟成Ⅰ

(2011年12月25日)

熟成 Ⅰ

チーズ造りのシナリオ 其のⅣ

チーズ造りのシナリオ 其のⅣチーズ造りのシナリオ 其のⅣ

フレッシュタイプ以外のチーズは、「熟成」という工程を行います。熟成前のチーズを「グリーンチーズ」と呼びますが、この時点では私たちのイメージする「チーズらしい味わい」は感じられません。適度な温度と湿度の中で熟成という工程を行うことによって、乳酸菌やカビ等の微生物、また生乳から移行してきている酵母の働きによって、チーズの中の蛋白質や脂肪が分解され、チーズ特有の風味(味わいやフレーバー)が作り出されます。例えば、パルミジャーノなどの長期熟成型のチーズを食べた時に、ジャリっと感じるあの旨みの塊。あれはチーズ中の蛋白質が分解されて出来たアミノ酸の結晶です。また、青カビタイプのチーズを食べた時に感じるピリっとした特有の風味はカビの働きによって脂肪が分解されて出来たものです。チーズの種類によって熟成方法も大きく異なりますが、ここではタイプ別に説明していきます。

白カビタイプの場合

カマンベールに代表される、白カビタイプのチーズは、加塩後、白カビ菌を塗着します。この白カビが蛋白質分解酵素を分泌してチーズ中の蛋白質”カゼイン”を分解していくのです(私たち人間が胃液で消化するのと同じ)。こうして外側から徐々に柔らかくなり始め、やがては中心部まで柔らかくなっていきます。つまり若いうち(熟成が浅いうち)は、中心部は固く、風味も弱めですが、熟成が進んでいくうちに固い部分は少なくなり、風味も強くなります。この熟成が進んでいない中央部のことを「芯」と呼んだりしています。

このように、熟度によって味わいの変化が楽しめるものですが、チーズによっては、短期間のうちに全体を均一に、ある程度の柔らかさにする方法を取るものもあります。この方法を「スタビライズ方式」と呼ばれ、主に脂肪分の高いチーズやロングライフチーズの製造に適用されることがあります。

また、白カビ菌はチーズ内の乳酸菌の分泌する乳酸を消費し、酸度が上がりすぎて乳酸菌が死滅するのを防ぐ働きもしています。

青カビタイプの

青カビ菌は前述の白カビ菌と比べ、蛋白質分解能力は弱く、チーズが流れ出るほど柔らかくはなりません。その代わり、リパーゼという酵素を出すため、脂肪を分解する能力に長け、あのピリっとしたブルーチーズ特有の風味を作り出します。青カビ菌を加える方法は、温めた原料乳に混入するもの、成型前のカードの時点で混入するもの、成型後に擦り込むものと、チーズやメーカーによって異なります。また、前回でも説明したように、青カビ菌は好気性(酸素を好む性質)なため、わざと空気の隙間が出来るように型入れしたり、チーズに金串で穴をあけたりと、青カビ菌が繁殖しやすくします。中でも世界三大ブルーチーズに数えられる「ロックフォール」は天然の風穴がある通気性の良い洞窟内で熟成されています。また「カブラレス」というスペインのブルーチーズは、天然の洞窟内に存在する青カビ菌が入り込むのを自然に待つ、といった熟成方法をとっています。

ウォッシュタイプの場合

「ウォッシュ=洗う」という名前が示すとおり、チーズの表面を塩水などで洗いながら熟成させていきます。フランスでも「Croute Lavee」と呼び「表皮を洗った」と表現されます。この工程を行うことによって、「リネンス菌」という、納豆菌と同じ酵母(枯草菌)の一種が優勢に繁殖できるようにします。このリネンス菌は、チーズの表面の脂肪と蛋白質を分解し、匂いの強い湿った膜を作るため、空中に浮遊している他の菌が繁殖するのを防ぎ、特有の風味を作ります。しかし、このリネンス菌はチーズの深部まで分解することが出来ないため、ウォッシュタイプのチーズ特有の風味は表皮にあり、以外にも中身は外皮ほど臭くはありません。「ウォッシュチーズ=臭くて食べにくい」と思われる方は、外皮を取り除いて召し上がると、意外な美味しさにびっくりすることでしょう。また、このリネンス菌は自然界では納豆菌同じく、牧草などに存在し(納豆は藁)、ごく普通に存在する菌です。
また、チーズによっては、その地方特産のお酒で洗い、特有の香りと風味を作り出していきます。

このように、これらのチーズは、乳酸菌の力だけではなく、カビや酵母の共同作業によって、そのチーズの風味やフレーバー、食感を形成していきます。つまり、そのチーズの味わいをつくるのに適したカビや酵母を付着させ、繁殖しやすい環境(温度や湿度、空気の流れ)をつくることが大切なのです。

次回は他のタイプの熟成方法について述べていきます。

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