ロックフォールチーズにはシャンベルタン
 「このチーズに合うワインを教えてください。」という質問をよく受けます。ワインとチーズの取り合わせのことを、フランスではマリアージュ(結婚)といいますが、これには様々な論争がつきもので一筋縄ではいきません。特にフランス人はそれぞれ意見があって譲らない。日本人は何でもいいから、ともかく決めて欲しい民族。フランス人は決められるのが嫌いな民族です。「チーズとワイン相性だって? チーズもワインも刻々変化しているのに、そんなもの決められるわけがない。自分の好みが第一。」などといったりします。ごもっとも。

 それでも、一時代前のフランスでは、ともかく食後のチーズには赤ワインと決まっていたそうですが、最近はチーズには白ワインが合うのという考え方が主流になってきたとか。そんなフランス人も納得するのは、テロワール(風土)を合わせるという考え方です。簡単にいえば、土地の食べ物はその土地の酒が合うということです。もっと広く、民族単位で考えればドイツ料理にはビール、日本料理は日本酒というわけです。

 一方、チーズとワインの取り合わせの定番と言うのがありますね。イギリスの青かびチーズのスチルトンには甘いポートワイン。フランスの青かびチーズのロックフォールには、ボルドーの極甘の貴腐ワイン、ソーテルヌ、ということになっていて、日本ではまさにこれが金科玉
  条になっているようですが、これにもフランス人は異論があるようです。チーズの巨匠ピエール・アンドゥルーエの本にはロックフォールには、ローヌ河のシャトー.ヌフ・デュ・パープが合うと書いてます。

 ずっと古い話になりますが、18世紀後半の食通で趣味人というより、色事師として名を馳せた、ヴェネチア生まれのカザノヴァは、ロックフォールとシャンベルタン(ブルゴーニュの名酒)で、難攻不落のやんごとなき姫君を口説き落とし、「ロックフォールとシャンベルタンは芽生えたばかりの恋を急速に進展させるのに卓効あり」と回想録に書いています。恋にお悩みの殿方、お試しになってみては? でも、シャンベルタンは高いですよ。恋にはお金がかかるのです。

ロックフォールとシャンベルタン