チーズとネズミ

先日、高崎線の電線がネズミにかじられて停電となり、長時間にわたり電車が不通になったという事件がありました。振替バスに乗るために大行列となり、多くの方が困り果てていました。ニュースを観ていたら、インタビューに答えたJKが、「ネズミが電線をかじるなんて。チーズをかじっていればいいのに・・・。」と述べていました。そうか、ネズミはチーズを食べると思っているのかー。無理もないことです。チーズのイラストを検索すると、穴の開いたチーズをネズミが食べている図柄が沢山出てきます。図は誰でも使えるイラストの一例です。

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 何故、チーズのイラストは穴の開いたチーズ(恐らく、エメンタール)が多いのでしょうか。正確なことは分かりませんが、1940年にアメリカで初上映されたアニメーション「トムとジェリー」に、ジェリーの好物として穴の開いたチーズが登場したことに始まるようです。2015年5月15日のC.P.A.コラムにて、フロマGさんがエメンタールは穴が開いていて分かりやすいためではないかとお書きになっています。エメンタールに穴が開く理由についても説明されており、プロピオン酸菌が出す炭酸ガスが原因で穴が開きます。

 フロマGさんがコラムをお書きになった後、エメンタールの穴について新しい論文が発表されました(Guggisberg et al, Int. Dairy J. 47: 118-127, 2015)。エメンタールの穴については19世紀初頭にはすでに研究がなされており、スイスでは大変重要な研究だったようです。100年にわたる研究の結果、チーズ中に核のようなものがあり、そこにガスが入り、穴が開くらしいことは分かっていました。しかし、その核が何なのかは不明でした。チーズ乳をフィルターでろ過したり、バクトフュージを通したりすると穴が開きにくいという現象をきっかけに詳しく調べました。その結果、干し草の微細粉末がチーズ乳に混入し、それが核となって穴が均一に成長することが分かりました。

「チューことは異物混入か~ツ!」と日本人は突っ込みたくなりますが、スイスでは気にしないのでしょうね。エメンタールの穴については11月に発行されたばかりの「チーズを科学する」の37-39ページに書いてありますから、ぜひご購入の上、お読みください。てなわけで、ちょっと宣伝させていただきました。ヨロシク!!

 穴の開いたチーズといえば、エメンタールが代表的ですが、ゴーダやチェダーなどでも熟成温度が高いと穴が開くことがあります。アメリカにおけるチーズ製造は北東部を中心にヨーロッパから持ち込んだチーズ作りからスタートします(ポール・キンステッド、「チーズと文明」、築地書館)。しかし、ヨーロッパに比べて気温が高いため、熟成中に穴が開きやすかったと思われます。となると、アメリカで製造される代表的なチーズであるチェダーにも穴が開いていた可能性は高かったと思われます。「トムとジェリー」に描かれている穴の開いたチーズがチェダーであった可能性もあるのではないでしょうか。

 次なる疑問は、ネズミは本当にチーズが好物なのでしょうか。ネズミは雑食性の動物ですから、チーズも食べる可能性はあります。しかし、マンチェスター・メトロポリタン大学のホルムズ先生によれば、「ネズミはチーズが好物だ」というのは都市伝説のようです(http://news.bbc.co.uk/2/hi/uk_news/england/manchester/5319210.stm)。先生の実験によれば、ネズミは穀類や甘い果物が好物であり、チーズには興味を示さないとのこと。では、何故このような都市伝説が生まれたのでしょうか。先生は昔の食糧貯蔵室には穀類や果物とともにチーズも保管されており、好物である穀物や果物が残り少なくなると、しかたなく好きでもないチーズをかじり、飢えをしのいだのではないかと推測しています。ネズミは臭いに敏感で、チーズの臭いが苦手なのではないかと思われます。

 ということで、「ネズミはチーズをよく食べる」というのは都市伝説でした。ちなみに、「トムとジェリー」にはもう一つ都市伝説があります。トムの死後、新たに現れた猫によりジェリーは致命傷を負ってしまうのだそうです(http://ciatr.jp/topics/33772)。呑み会ネタになりましたか?

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